【New】タイトル未定(未完)

(2022 / 6 / 19 Passion! VIRTU@L STAGE!4 新作のはずでした)



気だるい気分に包まれて、僕は知らない天井を見つめた。

消毒液の香り。物音のしない部屋。

病院か。と気付けたのは、視界の隅に見えた点滴袋のおかげだった。

顔だけを少し傾けベッド脇を見ると、カミヤが僕の手を握って俯いている。

ああ、何か心配をかけることをしてしまったらしい。

カミヤ、と口にしたつもりが、ガスガスとした空気の音が漏れた。まるで100年の眠りから覚めたように、使い方を忘れられた喉だ。

「アスラン!大丈夫か?」

音に気づいてカミヤが身を乗り出す。ずいぶん泣いたのだろう充血した瞳から、また涙がホロホロと溢れ出る。らしくない。そんなに泣いたら仕事に響いてしまうぞ、と言いたくてもうまく声が出なくて、ん゛っん゛っと咳払いをした。

「どうしようかと思った」

僕に覆いかぶさってカミヤが泣く。こんな状態なのに僕に体重が掛からぬように配慮するカミヤは優しいが、しがみつくように掴まれた両腕はあまりにも強かった。何があったのかわからないがとんでもないことが起こっているようだ。店のみんなは無事なんだろうか。事務所のみんなは。主は。

「プロデューサーさんは今先方と電話をしているから、すぐ来ると思う。喉、大丈夫か?水を買ってくるよ」

カミヤは読心の魔力も持ち合わせているらしい。僕は主の安否を知れてひとまずホッとする。おそらく自販機に向かったカミヤの背を見ながら、いつもならすぐに出てくる紅茶の魔法瓶がないのも珍しいと思う。

1人になった部屋で記憶を遡る。今が僕の記憶する今日なのであれば、たしか午前中に特番のロケがあって、そのあと映画の吹き替えのためスタジオまで主の車で移動をしていたはずだ。まさかその時事故に?でも主は無事らしい。僕だけ吹っ飛ばされたのだろうか。記憶がない。体に力を入れてみると特に痛みもなく体を起こすことができた。点滴をされてはいるが、見たところ怪我もなさそうだ。枕元のサタンが心配そうにこっちをみた。サタン、僕は大丈夫。サタンも無事でよかった。

スライド式の扉が動いて、カミヤと主が戻ってきた。主は上半身を起こした状態の僕を見て安堵とも心配とも言えない表情をする。嗚呼、主が無事で良かった。僕は自分の安否を伝えるつもりで笑みを作った。

カミヤから受け取った水を喉に流し込むと、張り付いた喉がようやく開いていく。過去に聖域で寝込んだ日もこうしてカミヤが看病してくれたなと思い出す。僕のベッドとは真反対の、固く真っ白なベッドの上で、この喉のはりつきは薬の副作用によるものだろうと推測した。

ようやく感覚を取り戻した喉で何があったのか問う。重いトーンで主が話しだしたのは、今しがた電話でやりとりした会話と診察の内容だった。

どうも僕は口にしてはいけないものを口にしてしまったようだった。原因は午前中に撮った料理番組。アイドルの創作料理対決がテーマのその番組は、今どき珍しくプロの監修がない。ゲスト独自の食材調達が見どころのひとつだが、相手側の料理に本来使われるべきではない食材が使われていたらしい。スタジオの机に並べられていた食材に悪いものはなかったはずだが…

「…谷間の姫百合、か」

装飾として花瓶に活けてあった白い花を思い出す。おそらく、と主が頷いた。慎ましやかに連なる蕾のようなその花は幸せの象徴であり、ちょうど今の季節が見頃なのだ。今回ライバルとして撮影をともにしたあの若者が、撮れ高を模索してその場の勢いで使用したのは安易に想像がつく。僕も自分の料理に夢中で相手の調理にまで目がいかなかったし、まさかこんなことになるなんてあの場の誰もが想像をしなかっただろう。お互いの料理を評価し合う形だったため、被害にあったのは自分だけと考えると不幸中の幸いだ。

カミヤは何も言わずに主の話を聞いていた。眉間に寄る皺に見ているこっちがハラハラとしてしまい、僕は主が看護婦を呼びに行ったタイミングでそっと手を握った。

「大丈夫か?」

僕が言おうとした言葉をカミヤが先に口にする。こっちの台詞だそれは、と言いかけたところで主が戻ってきたので、僕の言葉は形にならないまま空気に溶けていった。



・・・つづく!

今日のところはここまでです…完成せずにすみません。

後半は途中まで書いているのですが思ったより風呂敷が広がってしまい想定と違う話になってきたので軌道修正をするか変えるか悩んでいます。

いつになるかわからないのですがのんびりお待ち下さい。

富士見で一杯さんの方めちゃくちゃ最高なので是非見てください!!


ぽよ屋

ぽよ屋の二次創作物置き場。 現在置いてあるもの:神アス